めでたいとくれば、これは呑まずにはいられまい。 式でしこたま呑み、その後もしこたま呑み、新郎宅に押し いってからもしこたま呑み、朝をむかえる。 まだ結婚経験がないので、人生の先輩方のことばというの は、経験者だけに重く、とても有意義なのみだった。もつ べきものは、人生の師なのだなぁと実感した。 朝かえるも、電車の途中で気分が悪くなる。気がつくと、 しゃがんでいる。間違いない。これは二日酔いだ。 ひどいときや、睡眠時間が短いときは、起きてすぐに二日 酔いを感じる。しかし、ある一定の条件がそろっていると、 起きて活動をはじめてから、じわじわと二日酔いが襲って くる。 げっぷをしたときにカレーの香りがした。昨晩、終盤あた りで食べたものが胃の腑にとどまったままなのだろう。こ れは吐いて楽になるしかあるまい。 自宅近辺の駅のトイレでまず一発。 トシャーーーー 思いかえせば、ここ数週間の睡眠不足な生活と、週末に某 家で行われる飲み会が、確実に内臓をえぐっていたのでは ないか。 そういえば、ここ一週間くらい前から食欲が減退していた。 自分は朝目が覚めると、まっさきに腹が減る。それがここ 一週間はなく、別に食べなくても保った。ただし自分の場 合、腹が減っていようがいまいが、三食三度はきっちり食 べる。これがいけなかったのか。 ほかにも心当たりがある。そんなこんなで、この一ヶ月で 胃腸の調子が悪化していたんだろう。昨日の快酒で、つい に胃の腑が一時限界に達したのだ。 うちに帰り横になるも、汗と気持ち悪さで眠れず。乾坤一 擲、再びトイレにはいる。 トシャーーーー トシャーーーー 鏡に写る自分をみる。吐いている自分の姿も、なかなか悪 くない。出し終わったあとなど、一仕事終えたようですっ きりしている。 横になっていると強い雨が降ってきた。梅雨はいい。強く たたきつけるように降る雨を愛でつつ、歌をよむ。    五月晴れ 便器飛び込む ゲロの音 歌を聞いてすぐに情景が浮かんでくる、これすなわち写生 である。五月晴れ 便器飛び込む ゲロの音、という歌は、 何度か練り直したあとに、自分なりに写生の視点で整理し たものだ。 発句で、晴れ晴れとした様子が浮かぶ。2句で情景は便器 にうつり、結句で吐いている姿が浮かんでくる。五月晴れ という情景と便器という情景の差異がおもしろい歌だ。 五月晴れ、には、季語であるとともに、六月の結婚式で酒 を呑んだという意味もふくませてある。ほかの季語も検討 したが、これがよい。 便所飛び込む、ではなく、便器飛び込む、としたのは、こ の方が便器に向かって吐く姿勢をとっている姿が連想しや すいからだ。 結句はどうもうまくない。ゲロの音ではあまりにも汚い。 ただ、これ以外にいい句がおもい浮かばなかった。いい案 がある方はぜひご指南いただきたい。 この季節は天気がごんごらかわりよるので、下の句をつけ て短歌にし、五月晴れに対して五月雨を使って、ゲロを吐 く姿と雨が降りはじめるようすをかけて、うまいこと作れ ないものかと四苦八苦するも、これが限界だ。どなかた、 下の句、求む。 五月雨という、いっけんすると陰鬱なイメージにもなりか ねない言葉を、五月雨のよい点を強調しつつ、ゲロの流れ と絡めつつ、まるでアジサイと梅雨を愛でつつ酒でも飲ん でいるかのごとくさわやかで、優しい歌に仕上げたいとこ ろだ。 ところで、一般的にゲロの擬音には「ゲー」がもちいられ る。しかし思うに、ゲロを吐く場合、うっぷと食道まで前 兆が表われたあとは、一気呵成に流れでるのみだ。そして 流れている時間が、おもいの外ながい。よりしさいに観察 するならば、ゲロの擬音は トシャーーーー の方が優れているとおもう。 ただ、たしかに、「ゲー」や「ウップオエ”ー」と勇ましい声 をあげつつ吐かれる方もいらっしゃるので、トシャーーーーが 一概に優れているとはええないのかもしれない。この点につい ては個人差が強くあらわれるか。 ちなみに、よりしさいに観察すると、自分の場合は大きく二波 にわかれてやってくる。 ォェ、ォェ、ゥゥッップ トシャーーーー ハァハァハァ ゥグッ トシャーーーーーーーーーーーー 二度目の方が長いことがおおい。トシャーのあとの長さで、だ いたいどの程度吐き続けていたかを表現できる。 しかし、ゲロをした後というのは、なぜあれほど気持がいいの だろう。吐くと途端に楽になる。 吐いて爽快な気持になることと、五月雨で心が洗い流され平穏 な気持になれることを、うまいこと歌に織り込みたいんだが、 うーむ。